カーフィルム 規制強化? 可視光透過率測定 EV時代に“遮熱”への高い期待も 「美装ビジネスフェア特別冊子 2024 年 4 月号別冊」
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カーフィルム 規制強化? 可視光透過率測定 EV時代に“遮熱”への高い期待も
同じ自動車用フィルムでも、新しく急成長する外装用プロテクションとは異なり、長い歴史を持つ内窓用のカーフィルム。取り巻く規制(法律)や業態動向に大きな変化はないものの、ここに来てサービスの可否を巡り1つの議論が加熱している。
その焦点はフロント3面(フロントガラス・運転席・助手席)へのフィルム施工。長い歴史ゆえに施工単価も廉価に維持された中、複雑化する事業環境はビジネスとしての魅力を毀損する部分も。一方でEV普及を一因に新たな需要も芽生え始めている。
発色系の登場が発端 複雑化する可視光線透過率測定
特に2023年以降、業界内外で「フロント3面フィルム施工」を巡る議論が加熱している。発端の1つが、発色系フィルムとも呼ばれる「反射する光に色を視認できるフィルム」。発色系フィルムの代表的ブランド「ゴースト」シリーズを製造・販売するブレインテックは、専門施工店を中心に“合法的なフィルム施工”を提唱している。
そもそもフロント3面へのフィルム施工は、道路運送車両法の保安基準で「フィルムを貼った状態」で可視光線透過率が70%以上であることが規定されており、これは罰則規定が付された2003年から変更されていない。それにも関わらず今になり議論が巻き起こった背景には、その測定の仕方が確立していなかったことに一因がある。
ブレインテックは、従来から施工専門店や指定工場などの現場で、保安基準とは異なる規格の簡易測定器が使用されている現状を指摘。ゴーストフィルムとともに保安基準の規格に即した測定器「PT-500」も活用することを推奨した。23年1月には、国土交通省からも各地方運輸支局などに向け、指定工場でフィルム装着車を車検する際に「保安基準に即した機器(PT-500など)での計測」や「それが難しい場合の運輸支局などでの持込車検」を示す通達も発出された。
▶施工業者様向けご案内 令和5年1月13日 国土交通省自動車局整備課通達
指定自動車整備事業における着色フィルム等が装着された自動車の指導について
▶可視光線透過率測定器PT-500 詳細ページ
一見クリアになったように見受けられるフィルム装着車の取り扱い。ただ現実には、通達の解釈を巡り様々な情報が横行。ディーラーや整備・修理工場はもとより自動車系メディアやフィルム施工者からも「フロント3面施工が規制強化された」といった論調が出始め、PT-500が高価なこともあり保有しない指定工場では入庫を断る動きも。これに対し、ブレインテックやフィルム施工店らで構成する業界団体は業界内外に向けた情報発信を通じ、現在進行形で「合法的なフロント3面フィルム施工の普及」に取り組んでいる。
リア5面で15万円も可能?EV時代の高級カーフィルム
事業環境が揺れ動く中、従来とは異なるニーズやそれを捉えようとするビジネスも生まれ始めている。ゴーストシリーズを皮切りにカーフィルムの施工・販売に乗り出したソフト99オートサービスは、24年2月の自社グループ展示会で高遮熱という機能性を売りにした製品ラインナップを披露した。
主要ターゲットの1つがEV。空調効率が電費=航続距離に大きく影響するEVでは、夏場の空調効率向上に寄与する高遮熱フィルムの恩恵は大きい。加えて「カーフィルム市場ではスモーク=目隠しを目的に安さを求められることが多かった。ただ近年のPPF拡大も背景に高機能・高単価な自動車フィルムを開拓できる土壌ができている。従来は〜5万円だったリア5面施工も、フィルムや提案次第では15万円でも喜ばれる」として、今後は様々な指標が横行する遮熱性能への理解促進とともに、新たな市場の開拓に臨む。
ただ、その新たな市場にしても、今後カーフィルム事業を円滑に営む上での障壁は前述のように低くない。綺麗に貼れるかの施工技術にとどまらず、法規制や関連事業者への理解・対応、遮熱性能などフィルム素材に関する見識、それら専門情報の顧客への丁寧な提供など多面的な取り組みが不可欠だ。
取材協力:ブレインテック/ソフト99オートサービス